「国民主権」と平和主義

国民主権とは

国民主権とは、主権が国民にあることをいいます。

 

主権の中味に関しては複数の概念が含まれているのですが、もともと国王や専制君主にあった主権を国民が奪ったという点が重要です。

 

国民主権の考え方は実はひとつではありません。

憲法の基本的教科書では、正当性の契機権力的契機という非常に難しい議論が展開されています。ここではこの議論には立ち入りません。

 

いずれにせよ、日本国憲法では代表民主制(間接民主制)が採用されています(憲法43条)。

その内容は憲法43条を含む第4章「国会」と平和主義のページへ→

 

日本国憲法のもとでは、国民が直接政治的な決め事に関わるのではなく、代表者(国会議員)がやっていることしっかりと監視し、その国会議員が期待通りの働きをしない場合には次の選挙では別の議員を選ぶという方式の国民主権になっています。

 

議院内閣制と大統領制

国民主権の話になると、議院内閣制と大統領制の制度の違いを思い浮かべる方も多いかと思います。

この議院内閣制と大統領制というのは、行政府のトップを誰が選ぶかという考え方の違いです。

 

世の中には、大統領制が一番好ましい政治体制と考えている方が少なからずいると思います。

しかし、平和主義という考え方においては議院内閣制に優れている面があります。

 

大統領制というのはアメリカ以外でも採用されている国が多数あります。

私たちは大統領制といえばアメリカを思い浮かべますが、中南米や中東などで大統領制を採用している国では大統領制が何十年も大統領制に居座り国民を戦争に巻き込む国が少なくないのです。

 

この議院内閣制と大統領制の考え方の違いは行政府に関わる考え方の違いですので、第5章「内閣」と平和主義のページで再度取り上げます。

 

国民主権と平和主義の関係

国民主権という観点から平和主義を見てみた場合、最終的には戦争をするか、人殺しに加担するかは「国民の多数派の意思」で決まることになります。

 

現在の日本国憲法には憲法9条がありますので、そう簡単には戦争に加担はできません。

しかしその日本国憲法も96条で憲法の改正が可能であることを認めているのです。

ですから、極論すれば憲法9条を完全に骨抜きにして他国を侵略することも可能になります。

 

前述のように、日本国憲法では代表民主制(間接民主制)が採用されています(憲法43条)。しかし、その一方で憲法96条で憲法改正権を規定しています。

この憲法96条は、直接民主制の考え方に立脚する例外的規定です。

 

憲法改正という重要事項は代表者の判断に委ねるのではなく、国民自ら考え、国民が憲法を改正していいのか決める仕組みになっています。あえて例外的規定を設けてまで国民が直接意思表明できる仕組みを設けたのは、憲法改正は他人任せにできないほどの重要なことだからです。

 

現行憲法のもとでは侵略戦争はできませんが、国民の多数派がいいと考えれば憲法9条を改正して侵略戦争も可能になります。

その結果、相手国から反撃をくらい、国民のなかにも多くの死者がでるでしょう。

 

そういった戦争を可能にするのか、判断しないといけないのはあなた自身です。